八月、午後一時半

陽射しが重い。今日は日傘を忘れてきた。
蝉の声がざらざらと降ってきて跳ねて転がってそこらじゅうに飽和している。肌がじりじり焼ける音を聞きながら歩くアスファルトの上は、ちょっと気を抜くとそのまま目玉焼きになってしまう。
太陽の匂いがする。膨大なエネルギーを受けてあらゆるものが匂いを放つ。呼吸のたびに空気が質量を持って口の中を出入りする。
汗が背骨を滑り降りた。顎を伝って落ちた。ぜんぶが融けて流れ出して、蒸発して跡形もなくなって、そうしたら私もこのむせかえるような空気の一部だ。
白線の上を選って歩く猫がゆらりゆらりとしっぽを揺らす。じゅわりじゅわりと焼かれながら私も歩く。靴底が焦げつくよりは先に、屋根の下に入りたい。

あつがなつくてこげぱんになりそう。

2013.8.10